チェアスキーパラリンピック日本代表・田中佳子選手 平昌オリンピックに向けて!

Profile

パラリンピック2006トリノ8位入賞をはじめ、ワールドカップ、ヨーロッパカップ、全米選手権など、世界各地での大会を転戦中。

Interview

Q.チェアスキー(座位で行うアルペンスキー競技)を始めたきっかけは?

子どもの時から足が悪かったので、他の子と同じようにスポーツをするよりも、見ているという状況が多かったんです。ある時、スキー教室があると聞いて、すごく楽しそうだし参加したい、でもできないという経験がありました。それ以来、そのことがすごく心に残っていたんですね。そして社会人になった時に、「どうにかこの自分の足でもスキーができる方法がないだろうか?」と病院の先生に相談したんです。そこで初めてチェアスキーというものを紹介してもらったのがきっかけです。

Q.始めた頃はどのような想いでスキーをしていたのですか?

もうとにかく楽しくて!冬になるとよく有給を使って友達とスキー旅行に出かけていました。そのうち、様々な障害を抱えながらチェアスキーをされている方々と知り合い、お話を伺った時に、「技術が向上すると、もっとスキーが楽しくなるよ。そのための手段として競技を始めてみたら?」と言われたんです。そうして、だんだんと“遊びだったスキー”が、“競技としてのスキー”に変わっていったんです。それが25歳くらいの時ですね。

Q.それから大会に出場する日々が始まったんですね?

やはり上達するほど楽しさも増していき、遊びとはまた違う楽しさも出てきたんです。そうして日本の大会に出るようになった時に、たまたま日本代表のコーチの方にお会いして「競技をやる気があるなら練習に来ないか?」と声をかけていただいたんです。そして日本代表チームの中で練習をして、海外大会でポイントを獲得するようになっていったという具合です。

Q.その頃に目標にしていたものはありますか?

20代後半くらいから海外の大会に出るようになって、「パラリンピックに出てみたい」という気持ちが出て来ました。間近で強い選手の滑りを実際に見る機会にも恵まれ、自分でもレースの経験が増す度に、「大舞台で自分も滑りたい」という想いが強くなっていきました。競技レベルが上がるにつれて、海外の選手とタイムを競ったりしていくのがすごく楽しかったんです。小さい頃から人とスポーツで競うという経験をしたことがなかったので、スキーを通して勝負の楽しさを学ぶことが出来ました。それと同時に、チームとして戦っている一体感みたいなものに醍醐味を感じています。もちろん個人競技ではありますが、年々携わって下さる方が増えてきています。森川さん(メンタルトレーナー)をはじめ、所属企業の方々やエージェント、フィジカルトレーナ―やスキーメーカー、コーチ、チェアスキーのメンテナンスをして下さる方と様々な形でサポートして下さる方々に支えられています。勝った時に多くの人と喜びあえることはとても嬉しい事ですし、競技年数を重ねるごとに周囲の方へのありがたみが増してきているように思います。

Q.メンタルに興味を持ったきっかけは?

調子良く試合で勝っている時には気が付かなかったんですが、結果が出せていない時って、練習ではすごく上手くできているのに、本番だと力が出し切れていないことが多かったんです。コーチからは「気持ちだよ!気持ち!」と言われていたんですが、正直「“気持ち”って何だろう?」と思っていました。練習でも試合でもスタートを切る時の感覚ってそんなに変わらないし、もちろん緊張だってどうしてもある程度はするものだろうし。でも、その時にメンタルトレーニングというものを学んでおいた方が有利に働くのかなと思って、インターネットで調べてみたのが始まりです。

Q.メンタルトレーニングにはどのような印象を持っていましたか?

普段は海外にいることが多いのですが、当時メンタルトレーニングは日本より一般的な感じがしていました。チームでも取り入れているケースを多く聞いていましたし、むしろ「メンタルトレーニングやってないの?」と驚かれることもあったので、私自身が遅れているのかなという印象でした。もともと自分が勝手に描いていたメンタルトレーニングというのは、メンタルを鍛えて強い自分になるというイメージでした。とにかく私は「早く成長したい!」という気持ちが強かったです。そして色々とホームページを見ながら探していた時に、リコレクトさんの「OKライン」に直感的に興味を持ったんです。本を読んでみて理解はできたんですけど、それを一人で実践するのは少し難しくて…。じゃあまずはお話だけでも直接聞いてみようと思い、門を叩いてみたという感じです。

Q.実際に話をしてみていかがでしたか?

初めは正直、初対面のトレーナーの方に色々なことを質問されて、自分の弱い部分などを話すことには抵抗がありました。でも、何度かお会いしていくうちに、だんだんと素直にお話ができるようになっていったんです。とにかく、リコレクトさんに行くと全員が笑顔で挨拶をして下さるので、その温かい雰囲気の中に入るうちに徐々に安心してお話ができるようになっていきました。

Q.どのようにトレーニングを行なっているのですか?

大会前やシーズン前など、月に2、3回程度トレーニングをお願いしていました。森川さんに「今こういう気持ちなんですが」とか、「今すごくこれがネックで…。」という風に話をするんですね。その上で、今すべき行動や考え方、目標設定などについて、ディスカッションをしながら気付かせてもらうような感じです。海外にいることが多いので、skype(インターネット経由のテレビ電話)を使ってお話することが多かったです。

Q.実際にトレーニングを受け始めてからはいかがでしたか?

初めの頃は、とにかく早く自分の気持ちをスッキリさせてくれるようなものを求めていたんです。緊張や不安といった自分の弱い気持ちを取り払ったり、鍛えてもらうようなトレーニングを思い描いていたんです。でも、始めた頃にまず取り組んだのは“自分の本当の気持ちと向き合う“ということとか、“客観的に観察できるようになること“でした。森川さんとお話をしたり、ゲームを取り入れたトレーニングの中で、それが徐々にできるようになり、自分のことを客観的に見るのが上手くなって、今の自分の状態を明確に把握できるようになりました。

Q.“今の自分の状態を明確に把握”するとは、どういうことですか?

その時々の自分が“どういう気持ちでいるのかを観察して、素直にそれを受け入れる”ということだと思います。例えば、競技以外でも講演でお話をさせて頂く機会があるんですが、「緊張しちゃいけない!」とか「上手に話せるか不安…」というように緊張や不安を感じることはよくあります。でも、そう思うことを否定したり、無理に消そうとしなくてもいいという考え方を教えて頂けたのはすごく斬新でした。

Q.“緊張や不安を受け入れる”ということが、どのように競技と結び付くのでしょうか?

スキーの試合の時、スタートに向けて確実な段取りで、必要な準備が冷静にできるようになりました。今までだったら、スタート前に心臓がバクバクするくらい本当は緊張しているのに、「緊張しちゃいけない!」と無理に思考で感情をコントロールしようとしていたんです。でも、そうすると逆に「緊張」という二文字にすごく捉われてしまうんです。本当はスタート前なら、レースのことに集中しなければいけないのに。

Q.無理に感情をコントロールしようとしていたのですね?

そうですね。でもトレーニングを受けてからは、素直に「あ、今緊張しているな…」と気付けるようになって、ワンクッション挟めるようになりました。「緊張しているな、よしじゃあ次はレースのことに集中しよう」という思考回路に変わり、気持ちの整理ができるようになり、スッキリした状態で競技の技術的な部分に集中して、準備ができるようになりました。以前はレース前に何か予想していなかった出来事が起こると、気持ちがザワザワしてしまい、落ち着かないままスタートを切っていたんです。でも今はそんな状況でも気持ちをうまく処理して、整理ができるようになりました。“気持ちの自己処理能力“が上がりました!

Q.レースに向けて、いつ頃からメンタル面の準備をされているのですか?

私の場合、特に感情に変化が起こるのは、“試合前の10分”なんです。緊張するということに問題を感じていた時に、森川さんからアドバイスを頂いたことは、“競技以外の日常生活の段階から、緊張する練習をしていく”ということなんです。試合前と同じように緊張するシチュエーションを、日常生活や練習段階において自ら作り出すことが大事だと言われて、日々取り組んでいました。つまり、日常生活や練習と試合は別物ではないということです。なるべく、それらを結びつけるように日々意識していました。

Q.メンタルトレーナーはどのような印象ですか?

どんな時でも気軽に相談に乗ってくれますし、いつも本当に真剣に自分のことを考えてくれているなと思います。初めは結構ズバッと言われたりするのかと思っていましたが、物腰のすごく柔らかい方で、トレーニング以外にも海外生活のお話をしたりして楽しい時間を過ごさせていただいています。森川さんに限らず、リコレクトの皆さんはいつも笑顔で温かい雰囲気という印象があります。

Q.「OKライン」(自分で自分にOKをあげられる基準となるライン)についてはどんな印象をお持ちですか?

初めは正直、「『OKライン』って自分の目標を下げることなのかな?」と、十分な理解ができていなかったので抵抗がありました。どうしても“試合に勝つ“というような「OKライン」でないと、クリアできたとしても自分にOKをあげられなかった時期があったんです。でも、そのラインをクリアできずに「ダメだ…」と感じることを繰り返す日々が続いた時に、森川さんから「ここに『OKライン』を設定していきましょう!」とアドバイスを頂いたんです。そしてそれをクリアできた時に、久しぶりに自分で自分を褒めることができたんです。

Q.自分一人だと「OKライン」の設定は難しい、と?

ここが一番難しかったです。やはり自分一人だと、「こういう風に滑りたい!」、とか「あの選手とランキング順位で並びたい!」というように、今の自分の状況や立ち位置を置き去りにして、自分に過剰な期待を持って、「OKライン」を設定してしまいがちなんです。そしてそれをクリアできずに自己否定感が募るという繰り返しになっていたんです。それを森川さんとお話をしながらすり合わせをしていくことが大事だなと感じています。

Q.今の自分の状況をトレーナーと一緒に整理しながら「OKライン」を設定しているのですね?

そうですね。「OKライン」とは、掲げている目標まで一気に上がろうとするのではなく、少しづつステップを上がりながら近づいていく、つまり“目標までのスロープを階段に変える”というイメージに近いのかなと思っています。そうすることで、少しづつかもしれないけれど、確実に自分が成長しているなという実感や達成感を得ることができ、目標の達成に向けて近づいていくことができるんです。

Q.今後の目標は何ですか?

やはり、2018年の平昌(ピョンチャン)パラリンピックに出場することです。みなさんに良いご報告ができるように頑張りたいです!

Q.最後にトレーニングの受講を検討されている方へのメッセージを頂けますか?

まずはもっと気軽に試してみたらいいのになと思います。私の知っている海外の方はスポーツ選手に限らず、一般の方でも、社会的地位の高い方でも色々と相談できる専門家が身近にいるように思います。気軽にプロの方に相談をすることで解決策が見つかることってありますよとお伝えしたいです。

WEB担当:鈴木 雄太

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