【後藤 史インタビュー】JMA(ジュニアメンタルアドバイザー)資格をサービスとして作ろうと思ったキッカケ <後編>親の声がけのポイント編

鈴木(以下S):それでは後編にまいりましょう。「声がけ」について、詳しく教えてください。

 

後藤(以下G):そもそも「声がけ」って、どんな風にしますか?

例えば、奥さんが「今日は会社のプレゼンなんだよね。あーうまくいかなかったらどうしよう」と朝から緊張してたり、不安そうだったらどんな声をかけます?

 

S:「落ち着いていつも通りやれば大丈夫だよ」とか「リラックスして行っておいで!」とか言いたくなりますね。

 

G:そうですよね。

この声がけって、知らない間にマイナスの感情を避けることを促す声がけになってしまっているんです。

マイナスの感情とは、「緊張」「怖い」「不安」「嫌」などで、プレッシャーのかかる本番や苦手意識のあるものに対して生じる感情です。 

鈴木さんは「マイナスの感情」は好きですか?

 

S:いや、できれば感じたくないですね。

 

G:私も、好きではありませんでした。今は、嫌いではなくなりましたけれども。

現役選手のときは、毎試合緊張していて、特に大切な試合の前にはお腹がゆるくなることもありました

これって一般的には「メンタルが弱い」とされていますよね。

私自身もトレーニングを受けるまでは(注:後藤は現役時代にトレーニングを受けています)、自分ってメンタルが弱いよなぁ思っていました。

ただ自分が、勝ちたいとか目標や夢を達成したいと思うほど、目標に近づけば近づくほど、緊張や不安が増えていく。感じたくないけれど、勝手に緊張はするし、不安はどんどん出てくる。

ということは、緊張や不安というマイナスの感情は、夢を叶えるためには避けては通れないということです。

 

S:確かにそうですよね。

G:では、どうすればいいのかというとマイナスの感情を避けるのではなく、「感情の経験値」を増やしていく必要があります。「マイナスの感情の経験値」というのは、「マイナスの感情を感じながら行動を起こすことができた」という経験を重ねることで増やすことでできるのです。

例えば、人前で話すことって最初は誰しもが緊張しますが、毎朝3分間会社の朝礼で話さなければいけない当番に任命されたとします。

「嫌だなぁ」とか前日は「緊張」で寝られないかもしれません。

それでも、1ヶ月毎朝話し続けたら1ヶ月後の朝礼でも同じように緊張しているでしょうか。

恐らく多くの人が「朝礼で人前に話す」という状況に最初より慣れてきているはずです。

これは、緊張や不安を感じながら行動を起こし続けたことで緊張の経験値を増やすことができたからです。

つい、マイナスの感情を避ける声がけをしがちですが、感情の経験値を増やすためには「緊張や不安な自分に気づく」ための声がけが、まず一つ目のポイントです。

「今日は試合だね。どんな気持ち?」と聞いてあげたり「緊張するよね。ママも緊張するもん」と共感する「声がけは子どもたちが自分の感情に目を向け、受け入れやすくなります。

さてそれだけでは「緊張してるからやりたくない」と、行動を起こさなくなることもあるかもしれません。

そこで次のポイントが、「OKライン」という自分にOKをあげるための基準のラインを子どもと一緒に設定する「声がけ」です。

子どもたちのトレーニングでよく見られるのは、周りから求めらている基準や期待に応えようとしたり、チームメイトやクラスメイトと自分を比較して、今の自分の実力値よりはるか高いところに目標を設定していることです。

今の実力値よりも高い設定なので、結果的にいつもできない感を味わい、本番が苦手になったり、自信を失うというサイクルに陥っていることがよく見られます。

 

S:僕も周りと自分を比べたり、親の期待に応えようとして自信を失ってしまった経験って記憶にありますね。

 

G:私たちメンタルトレーナーは「緊張した自分で、何ができると思う?」と質問を中心に、OKラインを子どもたちと一緒に設定しています。

そもそもできないことで自信はつきませんし、緊張してできなかった経験値を増やしてもさらに苦手意識が増えるだけです。

ここでポイントになるのは、目標とOKラインは別のラインだということです。

例えば、以前私が担当したフィギアスケートの選手(小学5年生)の話なのですが、彼女の目標は半年前から本番になるとジャンプを一度も成功できず、どんどん自信を失っていくばかり。

彼女の目標はいつも「ノーミス、完璧な演技」でした。

大会で、最初のジャンプを失敗したらもうそこで「ダメだ、できない感」でいっぱいになってしまっていたのです。

そこで緊張していたり、不安に感じている自分でできることにOKラインを設定して、試合に臨みました。

「ジャンプをスピードを出して、高く飛べたらOK」

結果はというと、半年ぶりに大会でジャンプが成功。最後のジャンプの着氷が乱れたそうですが、その他のジャンプやステップなど、久しぶりに満足のいく内容と結果だったそうです

「試合に勝つ」「ノーミスで演技する」「シュートを決める」という目標を下げる必要はありません。

しかし高すぎる目標では、「できない感」が生まれやすくパフォーマンスが落ちやすい。

なので、目標に向かって「できた感」を積み重ねながら近づいていくことが大切です。

 

S:なるほど。だから「今の自分にできること」にOKラインを設定することが重要なのですね。

 

G:試合前に緊張していたり、不安そうであれば「今日は何ができそう?」と聞いてあげることは効果的です。

お父さんやお母さん、指導者の方々には、子どもたちが今の自分にできること、できたことに目が向くような声がけをお願いしています。

もちろんできないことを指摘するなと言う意味ではありません。

できないことを3つ探すなら、できたことも3つ探してあげてください。

周りと比べるのではなく、どんな小さなことでもいいと思います。

まずはお父さんやお母さんから、小さい「できた」を積み重ねる声がけをしてもらうと、子どもたちにもどんな環境でもいつの間にか自信を育てることやマイナスの感情を感じても挑戦することができる癖が作られていきます。

 

S:なるほど。
小さい頃からそんな考え方ができたらよかったなと今正直思いましたね。  

 

G:もちろん大人だって習慣づけをすれは、今から変わります。

私もトレーニングを始めたのは、20歳を過ぎてましたから!  

 

S:そうですよね。
たくさんの選手たちがリコレクトに訪れてくださって、目標や結果を掴んでいく姿を見させてもらってますからね
では、最後にメッセージをお願いします。 

 

G:夢を持つこと。夢を叶えること。

これって大切だって言われていますよね。私も大切だと思います。

でもここに、もう一つ「夢を育てること」も大切だと私は知って頂きたいです。

そもそも自分自身が夢をもてたのは、実は高校2年生のときです。   

「海外でプレーしたい」

初めて紙に書いて壁に貼った将来の夢。

小学生とか中学生の頃、自信がなかった私は夢なんて寝てるときに見るもんだなんてヒネくれていました(笑)

夢を叶えられるのは、ほんの一部の人。才能と運のある人だけ。

小学生の毎年の文集なんて、医者とか弁護士とかシェフとか毎年変わってましたしね。

自信がいつもなかった私は、夢を持つことすら時間がかかりました。

「海外でプレーがしたい」という夢を持つことができたのは、中学を卒業して無理やりプレッシャーの中に飛び込むことができて、高校で底辺から無我夢中でやっている中で自分に「できる」ことがやっと見つかってからのことでした。

「夢を育てること」

大学時代のサッカー部の監督に「夢は自分から逃げない。逃げるのはいつも自分だ」と言われたことがあります。

当時は軽く受け流していましたが、その何年後かにスペインへ移籍し1年目驚くほど全然通用しなかったんですね。

その時にコップから水が溢れるように「無理だ」「できない」「ダメだ」がもう限界まできて溢れてしまったとき、人生で初めて「もうサッカーはやめよう。諦めよう」という決断を下そうとしました。

その時に、ふと監督から言われた言葉が頭に浮かびました。

夢が叶うまでには、10年、20年、もっとかかるかもしれない。

自分で夢に向かって歩くことをやめた瞬間に、そこで夢は終わります。

でも、夢に向かって歩くことって楽しいことばかりじゃない。

悔しいことも、惨めなことも、不安なことも、どうしようもないくらい情けないこともあるかもしれません。

それでも夢を持ち続け、諦めず歩き続けるために、必要なものの一つは「自己肯定感」です。

「自分はできる」という自己肯定感は、行動を起こしていく上での大切なエネルギーになります。

1年で10回しか自分に「OK」をあげられる子と1年に1000回OKをあげられる子では、どちらが夢に近づくことができるでしょうか。

自己肯定感は、スポーツだけでなく、勉強や対人関係などに対する自発性や積極性にも良い影響を及ぼします。

この自己肯定感を育てていくための「声がけ」が、子どもと一緒に夢を育てていくことです。

周りからの声がけを変えるだけで、子どもたちがどんどん変わっていきます。  

ぜひたくさんのお父さん、お母さん、指導者の方々のお役に立てればと。

これからたくさんの可能性を持つ日本の子どもたちの夢と心が育つことを心から願って、この講座を構成しました。

そして、今回はインタビューを読んでくださり、本当にありがとうございました。

たくさんの方に講座でお会いできることを楽しみにしています。

メンタルトレーナー

後藤 史


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【ジュニアメンタルアドバイザー資格 -子どもの夢を育てよう-】


 

WEB担当:鈴木 雄太

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